ERPというものを知っていますか?
知っていても、「ERP=基幹システム」という認識の方もいらっしゃるでしょう。
ERPが広く普及した現在ならばその認識でも特に齟齬はありませんが、厳密にはERPと基幹システムは別のものなので分けて覚えておいた方がいいでしょう。
正しい認識ならばどこでERPを活用すれば抱えている経営課題を解決することが出来るか把握することも出来るようになりますので、その役割をしっかり学んでおきましょう。
今回は、ERPと基幹システムとの違いについて触れながら、メリットについても紹介していきたいと思います。
今回のポイント 1.ERPは企業活動を行う業務全般を管理するシステム 2.基幹システムは業務単位で独自に管理するシステム 3.ERPの導入はコストと相談して種類を決定するといいでしょう |
ERPの概要
ERPとは、「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略で、日本語では「統合基幹業務システム」「基幹システム」といいます。
また、ERPパッケージ、ERPシステム、業務統合パッケージなど様々な呼び方もされています。
生産管理手法である「MRP(Manufacturing Resource Planning)」を、会計などの管理業務にまで発展させたものが、ERPです。
ERPは、企業の基幹業務である「生産」「購買」「在庫」「会計」「人事給与」「販売」といった部門間での情報共有や連携をして、企業が持っている資源を一元化して管理することを目的としたものです。
ここでいう「資源」とは、企業の資金や資材、人材、情報、物流などを意味しています。
ERPを導入すると様々な部門で収集・使用されているデータを、統一した仕様の下で一つのデータベースにまとめられ、伝票情報なども一元化されます。
企業の中に複数の部門があるとどこに必要な情報があるか分からなくなり、他の部門で手に入った情報が思わぬところで使えるかもしれません。
企業内に存在する情報を一か所に集め、必要な時に引き出せるようにし、正確な企業の状態を把握できるようにして経営戦略や判断の材料にすることが出来ます。
基幹システムの概要
それでは、「基幹システム」とはどのようなものなのでしょうか?
「基幹システム」は企業の「主要業務」を支えるシステム全般を指しています。
この主要業務とは、企業活動をする上で欠かすことが出来ない業務のことを指します。
このような業務のことを「基幹業務」とも呼び、「基幹システム」はこの基幹業務を支えるためのものです。
他にも基幹システムは「バックオフィス系システム」「業務系システム」という別名もあります。
基幹システムの種類
業務をする上で重要な基幹システムの種類は以下の様に分類できます。
・生産管理システム
・販売管理システム
・購買管理システム
・在庫管理システム
・会計システム
・人事給与システム
これ等のシステムは、業務の担当部門により使用されるシステムが違うため、それぞれで独立して構築されることが多いようです。
独立したシステムなので、帳票や画面、データベースの仕様が異なることが一般的なため、他の部門との連携やデータを共有する時に手間がかかってしまいます。
そのためシステム間での連携や互換性が部門間でのやり取りには必要になってきます。
このように部門により独立していることが一般的なので、業務単位それぞれで独立したシステムをまとめたものを基幹システムと呼んでいると考えてもいいでしょう。

ERPと基幹システムの異なる点
ここまでERPと基幹システムの概要について確認してきましたが、その共通するところは「企業の基幹業務を支えるシステム」であるところでしょう。
しかしこれらには異なる点もあります。
基幹システムの場合
まず基幹システムは、「特定の業務を効率化することを目的にした仕組み」のことを指します。
例えば、販売管理システムの場合は、その名の通り「販売管理」という業務を効率化するための仕組みになります。
しかし、販売管理システムはそれ以外の業務の効率化には直接的にはつながりません。
会計システムの場合も「会計業務」の効率化しかできません。
他のシステムも同様なので、担当する業務にしか効果を発揮することが出来ません。
ERPの場合
対してERPは、経営基盤全体を強化するためのシステムのことを指します。
その目的は企業が持っている情報・資源を一元化して管理し、部門間での情報共有や連携をして、企業の経営戦略・戦術を判断するための材料を素早く提供することです。
そのためERPの導入をすると、経営陣の意思決定を素早く正確にして、変化する情勢に合わせた企業の即応性を高めることが出来ます。
比較から見える事
企業活動をする上で基幹業務というのは欠かすことが出来ないものです。
この基幹業務の担当部門の連携が取れていないと効率が悪くなったり経営に支障が生じたりする可能性があります。
例えば基幹システムの内「生産管理システム」を導入したことで生産管理の効率を向上させても、「購買」「販売」の分野が弱ければ市場のニーズに合わせた生産を行うことが出来ないため利益を出すことが出来ません。
不良在庫を抱えるリスクや欠品などの問題が生じる可能性があるため、企業活動は一点だけを強化すればいいものではないのです。
基幹システムは「業務視点での効率化」、ERPは「経営視点・全社視点での最適化」、このようにそれぞれの目的とするものが異なっています。

ERP導入によるメリット
ERPを導入することのメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。
以下のようなメリットが期待できます。
・経営状態の可視化
・業務効率化による現場負担の軽減
・調達コストや在庫保管費用の最適化
・生産管理工程の管理、調整の適正化
基幹システムだと独立していたシステムをERPによって統合すれば、部門間での情報共有の速度や効率が向上します。
これは業務の効率化やコスト削減、利益増大という現場レベルでのビジネスモデルの革新につながるのです。
特に「経営状態の可視化」は企業活動の方針を決定する時に欠かすことが出来ません。
方針や次の事業を決定しやすくなるので次の行動へ移りやすくなります。

ERPの種類とメリット
ERPにも複数種類がありそれぞれにメリットがあります。
現在、以下の様に分類されています。
・統合型ERP
・コンポーネント型ERP
・業務ソフトERP
・クラウド型ERP
統合型ERPの場合
上記で紹介した企業内のデータを一元化して管理することが目的のものになります。
一元化することで他部門との連携などにかかる手間を削減できるため業務の効率化につながります。
また現場の状況や経営状況などのデータをリアルタイムで確認することが出来るため、経営陣は素早く正確な判断が出来るようになります。
コンポーネント型ERPの場合
これは既存の業務システムの最適化を目的としたシステムです。
既に導入されたシステムとの連携が容易に行えるため、それまでの業務体系を崩すことなく情報システムの強化や業務の効率化が図れます。
また、システムの拡張が容易なことが特徴なので、必要となった機能を都度追加することが出来、費用や開発期間の短縮といったコスト削減も可能です。
業務ソフト型ERPの場合
基幹システムの内、管理会計システムや発注管理システムなどの特定分野の業務を一元管理化します。
特定分野のみの一元化なので他のERPよりも費用が安く、導入期間も短いというメリットがあります。
クラウド型ERPの場合
他の従来の種類よりも連携のしやすさやコストの削減、生産性の向上をするために、データを効率よく運用していくためのシステムとして開発されたものです。
柔軟性が高いため、昨今のグローバル化といった様々な環境やニーズの変化という業界の流れに合わせていきやすいため、現在注目を浴びている種類になります。

今回のまとめ
今回はERPと基幹システムとの違いとメリットについて紹介させていただきました。
現在ご使用になられているシステムは他の部門のデータも一元管理されていますでしょうか。
基幹システムは他のシステムとの互換性が薄いため柔軟性がありません。
しかし、ERPならばその壁がないため業務の効率化につながるでしょう。
